Zama talk

2014年08月06日
「香りの効用はどこまで期待できるのか?」綾部 早穂 氏
 第1117回 マーケティング創造研究会
日 時 2014年8月6日(水)14:30~16:30
テーマ 香りの効用はどこまで期待できるのか?
講 師 筑波大学 人間系心理学域 教授 綾部 早穂 氏

 最近は、商品の新しい価値づくりとして五感による効用が注目されています。
中でも香り(嗅覚)による付加価値づくりに関心が集まっています。

 今回は、長年、香りの研究をされている筑波大学の綾部早穂先生をお招きして、
感覚知覚心理学の視点から「香りの効用、効果―それはどこまで期待できるか」
について内外の研究成果をふまえご解説頂きました。





(主な内容)

1.においの受容メカニズム・・・におい分子と受容体

・日常生活のなかで「香り」として意識されるものは何十、何百種類の
 におい分子から構成されている。
・1種類のにおい分子でも複数の受容体を活性化する。


2.パターンの知覚

・どこに着眼するかで、知覚するものが異なる可能性が大。
・におい知覚の不安定さ、個人差
・においの快・不快:生得的かつ後天的(学習)
  ―意味的表象の獲得によりにおいの快・不快が形成され、
  におい物質の物理・化学的符号化の役割は減少する。


3.においの評価

・知っているにおいは強く感じる。
・においの快・不快はラベルの影響を受けやすい。


4.もうひとつのシークエンスが顕在化した

・鼻孔は受精後4か月で開き、羊水の吸い込みが生じる。
・母親の血液システムを介して羊水や胎児の血液中を通る。
・母親の脇や乳首から分泌(母乳)


5.顕在的にも潜在的にもにおいの体験状況(状態)が、そのにおいに対する
    快・不快を形成する個人差を生む。

・評価における文脈効果―快なにおい後の不快なにおいはより不快に。
   ただし、不快なにおい後の快なにおいに対しては文脈効果は生じにくい。
・選択肢が互いに類似している場合に最初に接触した選択肢へ選択が偏る傾向がある。



6.快・不快等の評価における系列の効果(快・不快評価の困難さ)

・においへの気づきやすさ関心度の個人差
・形がにおいに及ぼす影響
・他感覚との相互関係と性格特性



7.日常生活における、においへの気づき、関心がにおいの評価へ影響を及ぼす

・6種類の市販の香水やボディシャンプーについて26の形容詞で印象評定
・においが人物印象に及ぼす影響―温かい印象のにおいと冷たい印象のにおい





 人間の嗅覚は、いわゆる人間の持って生まれた生得的・生理的なものという
イメージが強かったのですが、「意味的表象の獲得により、においの快・不快は
形成され、におい物質の物理・化学的符号化の役割は減少する。」というお話は
大変不思議な思いがしました。
 そういえば生まれたばかりの赤ちゃんは「ウンチの匂いをいやがらない」という
ことを何かの本で読んだ記憶があります。

 また「においの快・不快はラベルの影響を受けやすい。」「形がにおいに及ぼす影響」
等々のお話は大変興味深いお話でした。

 「質疑応答」においても実務家の皆様から、においに関する日頃の疑問がたくさん出ました。


(マーケテイング共創協会 座間 忠雄)


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