第1129回 マーケティング創造研究会 | |||||
日 時 | 2015年3月26日(木)14:30~16:30 | ||||
テーマ | 「認知科学から見た<好み>と<社会性>:無意識的過程に着目して」 | ||||
講 師 | 東京大学 先端科学技術研究センター 認知科学分野 准教授 渡邊 克巳 氏 |
今回は、「人の心の意識的・無意識的過程」について認知科学を基に研究されている
東京大学 先端科学技術研究センターの渡邊 克巳先生を講師にお招きして「“好き”とは
どういうことか」「“欲しい”とはどういうことか」等についてご解説頂きました。
・人は今までの経験、知識でものを見ている
・ある絵の中に「人の顔」を見た人と見えない人の差
・人はストーリーを作ってものを見る
・サッカード抑制
・「好きだから欲しい」という図式は常に成り立つわけではない
・「もう好きではない」けれども「欲しい」→依存症の例
・「好き」と「欲しい」は異なった神経基盤が関与している可能性
・神経化学や脳科学の知見は「欲しい」系の話が多いが、
現実の状況では両方が複雑にからんでいる
・単純接触効果
・フランスの印象派の絵・・・バラマキ効果
・CMのつくり方・・・中心の人物は変えないで背景をどんどん変えてゆく
・「目新しいから好き」と「馴染み深いから好き」
・好みは1秒で決まる
・好みは新奇性と親近性の組み合わせ
・どちらが好きか→眼球運動→選択の予想が可能
・第一印象は10分の1秒で決まる→その後も変わらない
・人はあるものの判断をする場合、バックグラウンドで「好み」の判断をしている
・好みの後付け傾向(Choice Blindness)
・多くの被験者が自己の意図を「後付け」で説明した。
・購買行動・・・選んだ本当の理由は?
→ストーリーが通っているかどうかが重要
→本当かどうかはわからない
・あるものを作る場合、買った後で好きにさせることが大事
(なぜ、これを好きなのかをどう埋め込むか)
渡邊先生は「意識を優先した古典的な人間観を基にしたマーケテイング展開は
今後限界があるだろう」と話を結ばれました。認知科学(脳科学)による人間の
無意識の研究に大いに期待が寄せられます。今後、これらの研究を組み込んだ
21世紀の「消費者行動・マーケテイング論」の体系が生れてくるだろうと思います。
(マーケテイング共創協会 座間 忠雄)